炙るあざとさ 炙らない正直さ

刺身とか映画とかあれとかそれ

(54)いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

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出典:いきなり先生になったボクが彼女に恋をした : フォトギャラリー 画像(11) - 映画.com

 

いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

知り合いが関わっていたので、普通だとまず選ばない映画なのですが、観に行ってきました。

その知り合いにはものすごく申し訳ないのですが、、、これはきつかった。

 

以下ネタバレになる部分と、この映画が好きな人は不快に感じる点があると思うので、読まないでください。

 

 

 

もうね、、、、脚本がどうしようもなくひどい。

日本的な感情の描き方や、表現の部分がなくてほんと何これって感じになるので、怖い。こんなこと日本ではないし、そう考える日本人はいないよと思うシーンが多々ある。

もう冒頭からこの映画あかんわと思ってしまった。

企画・原案・脚本:Kevin DC Chang ということからも、韓国サイドからの企画で立ち上がっているように感じられます。何回も言いますけど、映画の中の日本人の日本人らしさが全然感じられない。

さらに、この「いきなり先生」製作委員会にエイベックスががっつり入っており、

製作:松竹/エイベックス・ヴァンガード/エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ/エイベックス・ミュージック・パブリッシング/エイベックス・ピクチャーズ

参照:映画『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』公式サイト

おそらく、それが最悪な方向に働いているのだと思う。

イェソン(SUPER JUNIOR)をもっと出してくれ。ここのイェソンはそうじゃなくて、こっちの方向でとか。唐突すぎる訳のわからんシーンが多すぎた。

音楽も酷い。音楽というか効果音含めて、ほんとうにひどい。

たぶん、脚本との相性が悪すぎる。

音楽は、釣りバカシリーズをやられている、信田かずおさんという方だそうですが、おそらくこの方は日本人が作った日本的な昔ながらのドタバタコメディー映画なら手腕を発揮される方だとおもう。バネが伸びる音の効果音とか、もうやめてくれよとか思ったんですけど、一定数好きな人もいるでしょう。しかし、この映画は、原案の方がKevin DC Changという韓国の方なので、前述したように脚本が全然日本的でない。

それが一番最悪に働いていたシーンというか、一番恐怖を感じたのシーンがあった。佐々木希演じるさくらが韓国からビジネス目的で来た社長に気に入られて、ホテルの1室で襲われるシーン。はっきりいってこのシーンの演出と音楽の組み合わせには、背筋が凍りついた。

佐々木希を騙して自分の部屋へ連れ込む。嫌がる佐々木希を子を襲おうと、ホテルの広いスイートルーム内を追いかけ回る終始笑顔の韓国人社長(めちゃくちゃ男前)。まじで、本気で嫌がる佐々木希と笑顔で悪気がない様子で追いかける男前。この描き方が本当に怖かった。これ狂人ですよ。おそらくこのシーンを見た多くの人が、高畑裕太のホテル事件を思い浮かべると思う。示談済ませたのに、あれは合意ですよとか後から言いそうな雰囲気。そのシーンを平気で入れる表現は、全く日本的でないし、おかしい。韓国の方の男前のごり押しと発案だと思いますが。そして、それを最大限ポップにしようと狙っているのか、釣りバカの家庭シーン的なドタバタ追いかけ回るような音楽が永遠とバックで流れる。怖くて仕方なかった。もしそれが、恐怖を際立たせる狙いならすごい。黒澤明対位法ですよ。映像と音楽を全く逆で描く。そんな狙い1mmもないと思いますが。あのシーンで正直笑える人なんていないでしょう、このご時世。マジであれはほんとにダメだと思う。ほんとひどい。

 

この映画の救いは、主演のイェソンと佐々木希が美男美女だという点。

 

正直、脚本で変な流れは作る必要なくて、イェソンが佐々木希に韓国語を学ぶシーンをもっともっともっと丁寧に魅せるだけでめっちゃくちゃ良くなる映画だと思う。

1つ修正案としての例ですが、、、

イェソンは先生をしたことがないから、普通の先生が教えないような特殊な日常会話例を佐々木希に教えてしまう。「借金取りに追いかけられている韓国人に道を聞かれたら、「こっちは行き止まりだからあのゴミ箱の中に隠れればいい」と言ってあげてください」みたいなフレーズを教えたり。絶対に使う事なんて無いだろうと佐々木希が思っていたら、街中でまったく同じ境遇で逃げている韓国人に出会い、使う羽目になる。「使った・・・・」と呆然とする佐々木希。こんな吉本新喜劇的なべったべたな内容で良かったと思う。

この流れなら、どんどん案もでます。文化の違いからイェソンとケンカしちゃったりするけど、そのケンカのワードも授業で習ったフレーズで、めちゃくちゃ汚い言葉だったりして韓国語でやりとりしているのに、ケンカも面白い。韓国語での恋愛のやりとりも冒頭に教えちゃったりして「使う事なんて無いですよ~」とか言うけど、ラストシーンで使っちゃって「使うことになりましたね」みたいな。こんなべたべたでいいんですよ。あの美男美女がいたら。

 

なんで、あんな訳のわからん脚本にするかなぁ。

佐々木希が韓国語を学ばないとイケない動機も弱すぎるし、訳のわからん韓国からの社長とか不要。ムダに男前やし、意味が無い。あの社長は気持ち悪い方がいい。それならホテルのシーンも笑えた。帰ってくる元旦那の必要性もゼロ。さらに言えば、冒頭のイェソンが沖縄に行く理由と滞在する理由もあり得ない。

ドタバタコメディーやるなら、実際にありそうな部分はちゃんと筋通して、その中でふざけないと。

あと、絶対にいらないのは巻き戻しの演出。ホントに不要。

佐々木希が可愛い。ただ、それだけです。

 

点数:23点

(53)スクール・オブ・ロック SCHOOL OF ROCK

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出典:School of Rock Movie Review | Plugged In

 

スクール・オブ・ロック SCHOOL OF ROCK

2003年アメリカ公開の映画。

・・・13年間この映画を観なかったことを激しく後悔している。

シナリオはもう、べたべたすぎる内容なんですが、それでいて最高に面白くて出来がいいのは、間違いなく主演のジャック・ブラックの圧倒的なキャラクター。

もう、アホすぎて異常すぎるロックへの愛、口ギターソロとか、地面這うやつとか面白すぎて最高。

映画への賛否両論が地味に分かれてるみたいなのですが、このジャック・ブラックを受け入れられない人が一定数いるみたいなんですね。笑 わからなくもない。

私は、ゲラゲラ笑いながら観てたので、もう最後のシーンとか感動して泣いてました。

子供と音楽が揃って、各キャラクターがしっかり付いていて、何も言うことないですよ。

日本でもこんな映画絶対できる。ってか、影響受けてる映画多いか。13年前やしね。

 

点数:96点!!

(52)ボーダーライン SICARIO

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出典:ボーダーライン : フォトギャラリー 画像(3) - 映画.com

 

ボーダーライン SICARIO

麻薬カルテルモノはブレイキング・バッドから大好きなのですが、これまた違った視点で描かれた本作。面白い。

映画全体はものすごく静か。そして、画が、空が美しい。

FBI捜査官のケイトことエミリー・ブラントが真実を知らされずに麻薬カルテルと立ち向かう事になる。この様は、鑑賞者でも不安になりいらいらする。

しかし、有無を言わせないアレハンドロことベニチオ・デル・トロの存在感。怖い。
水拷問のシーンは詳細が描かれないんですけど、もう尋常じゃないことをしていることが容易に想像できる。怖い。

悪は悪で制す。断絶ではなく良い方の悪で抑える。
こういう話、正直者がバカを見るではないですが、こういう世界が世の中には必ずある。わかる。

プロによるプロの仕事。

邦題のボーダーラインはちょっとイマイチですが、じわじわとくるオススメの映画には間違いない。

 

点数:89点

(51)何者

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出典:何者 : フォトギャラリー 画像(13) - 映画.com

 

何者

大学生就活あるある青春ムービー。
私の就活は10年近く前ですが、友人同士の就活なんて気にしてもしょうが無いのに、気にしてましたねぇ。
時代が変わろうとも、そんな人間関係はそうそう変わらないのかもと思って観てました。
全体的には就活・学生あるあるが面白い。
ただ、話の展開が弱いかな。
あるあるがわかってる人には終始楽しめる話やけど、わからんかったら2時間はきついかも。
 
ただ、演出がめちゃくちゃうまい!これはほんとすごい。
俳優に合わせた配役がすばらしい。演技はもちろん、就活の現場・若者をわかっている人でないとできないと思う。
私もたまに会社の面接官をしますが、こういうやつ受けに来る!!!いるいるこういう学生!!!と思ってニヤニヤしてしまいましたし。
 
「何者」にもなっていない学生達が、何者になろうとしているのか。
この映画で一番好きなシーンは、1分間で自分を表現する「面接と舞台」の対比シーン。明確な意思で「何者か」になろうとしている舞台上の演者達の「熱量」。それが「何者かになれる、ある個性」への道しるべなのではないかと思いました。
就活は学生の熱量を見極める場所でもありますし、熱すぎても引いちゃうし。
ちょうどいい温度感って、企業によっても違うから難しいですよね。
人間いろんな人に対してそれぞれの顔があるのは、平野啓一郎の「私とは何か-個人から分人へ」でも詳しく書かれているので、何者で不快に感じた人は、この本を読むべきだと思います。
人間いろんな顔があって当たり前!
 
点数:82点

(50)華麗なるギャツビー

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出典:華麗なるギャツビー : フォトギャラリー 画像(3) - 映画.com

 

華麗なるギャツビー

美しい映画。

この手の話は、いかにパーティーを魅力的かつ豪華絢爛に描けるかが肝。

それが新旧関わらない音楽に合わせて描けている。音楽の使い方が上手い。

さすが、バズ・ラーマン監督。

そう、ドラマ「THE GET DOWN」観たので、バズ・ラーマンの映画を観たくなって観てみたんです。

人物の描き方も好き。やはりこの監督、言葉の力をすごい信じていると思う。

映像上に文字を登場させる事が好きなのかもしれない。

ヒロインのキャリー・マリガンが日本的でかわいい。好き。

どうでもいいのですが、私と同い年みたい。

いろいろとおもしろいし、凄いんですが、結局色恋に惑わされて、ディカプリオ盲目~状態になるってのがなんとなくストーリー的に解せないなぁ。

そんなところがあり、、、私としては90点止まり。

でも素晴らしい映画。金かかってるやろなぁ。

 

点数:90点

(特別編)The Get Down(ゲットダウン)

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出典:バズ・ラーマン監督がヒップホップ誕生の瞬間描く「ゲットダウン」劇中カット公開 - 画像1 : 映画ニュース - 映画.com

 

THE GET DOWN

今日は、友人から勧められたNetFlixオリジナルドラマ「The Get Down」。
クソ最高ですね。
HipHop好きにはたまりませんし、1970年代という時代感の描き方がまたいい。このころのニューヨークの姿や、時代背景、治安、人種とそこに絡んでくる音楽。この音楽が大きな軸となり、物語は動くのだが、その音楽がくっっっっそいい。めちゃくちゃかっこいいい。
監督は、バズ・ラーマン。他の映画観たことないんですが、「ジョン・カーニーの音楽映画に外れ無しの法則」のように、バズ・ラーマンが描くHIP HOPに間違いなしと、宇多丸師匠もおっしゃってました。
主人公のどうしようもない童貞感とか、才能を感じさせる言葉運びもすばらしく、話に引き込ませる力がある。
ヒロインの口の大きさも歌の上手さと比例しているし、観ているうちにその口も可愛くみえてくる。この子の歌ってるシーンの色っぽさとかも白眉。
グランドマスターフラッシュだとか、シャオリンとか脇役の色も濃いし、ヒロインのお父さんがブレイキング・バッドのガス・フリングだとか、いろいろ好き要素が多くてね。
とりあえず、続きが早く見たいのでございます!!!

 

点数:93点

(49)聖の青春【試写会】

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出典:聖の青春 : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.com

 

 聖の青春

原作小説 大崎善生著『聖の青春』が好き過ぎて、2016年公開映画の中では最も楽しみにしていた映画でございます。

何よりも先に観たくて試写会に応募しまくり、当選。先日行って参りました。

公開前のタイミングでここに書くか迷って寝かしてたんですが、やっぱり感想は書こうかなと。

 

この映画は松山ケンイチです。

松山ケンイチに尽きる。もう、何よりもすごいです。あの村山聖がそこにいた。

そして、松山ケンイチにつられて、周りの役者もすごいことになっていた。東出昌大染谷将太

将棋の対局シーンも素晴らしい。

命を削って指す駒の重さがこちらにも響いて来る。

とにかく演者がすごい映画です。

 

映画化まで丸8年かかったそうで、この監督さん原作小説と棋士 村山聖には相当思い入れがある様子でした。

正直、、、、、それが映画には逆効果に働いてしまっていると感じました。

原作をおそらく何百回と読み込まれたことでしょう。それにより、映画での表現が極限まで削られている。ナレーションもほぼないし、音楽も少ない。

説明に頼らず、役者に任せたかったのもわかります。この映画はそれくらい演者がいい。

しかし、それでは村山聖は描ききれんと思います。

あまりに説明が足りなさすぎる。

監督は編集中に、勝手に小説で描かれた説明の補正が脳内で行われていたのではなかろうか。

物言わぬ村山聖の脳内は、誰かが語りで補完すべきなのは間違いない。

そうしないと、ただの独りよがりで、破天荒な生活をして、病気しても仕方がないような男としてみえてしまう。(実際の妻の感想)

小説でも特に印象に残る水道の水滴のくだりなんてまさしく。聖の生きることに対する思いがわかるあんなにいいエピソードは、映画でもわかりやすく描いて欲しかった。

公開までの間に再編集かナレ入れしたほうがいいと思うくらい。こう思うのも最後の方にナレが入るから。最後のナレ入れでイイ声してた、原作者役?の筒井道隆でいいですよ。それだけでもっともっと良くなる。ぜったい。

それくらい出ている演者がすごいから。

原作を読んでいた僕は、脳内説明補正があったんで、泣けました。

ただ、一緒に行った涙もろいが原作未読の妻は泣けず。村山聖の気持ちがわからなかったとのこと。うぅぅぅ、、、悔しい。とてつもなく惜しい気がする。

もっと正直に言うと、予告編のほうが泣けた。

このロジックで言うと、予告編を作った人は無知でその中からわかりやすいシーンでしっかりと説明も入れて作り込んだ。

監督。もっと良くなると思う。この編集じゃないと思う。

ただ、ただ、ただ、ただ、それでもなんでも、松山ケンイチがすごいから、絶対に観るべきです。

松山ケンイチに95点あげますが、映画がいろいろ惜しいので、この点にします。

 

点数:79点

 

とりあえず、原作小説は100億満点のおもしろさと、村山聖の魅力が詰まりまくって、将棋なんか知らなくてもクッッッッッソ最高なんで、絶対に読んだほうがいい。

 

 

 

聖の青春を読む人生と読まない人生なら オレは読む人生を選ぶ。