炙るあざとさ 炙らない正直さ

刺身とか映画とかあれとかそれ

(60)仁義なき戦い 広島死闘篇

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出典:Amazon仁義なき戦い広島死闘篇

 

 

仁義なき戦い 広島死闘篇

これもめちゃくちゃですね。広島。

今作も菅原文太こと広能が活躍するのかとおもっていたら、いやはや広島死闘篇。山中こと北大路欣也大先生が最高じゃないですか。どうしようもない正直で馬鹿なまっすぐな眼。こんな顔できないですよ。ラストシーンとかあれ、映画史に残る名場面でしょ。

千葉真一が演じる大友がくそめちゃくちゃなんですが、そのめちゃくちゃ加減がもう拍手送りたいくらい。やめてくれ~(©ライス)って思わず出てきましたね。

この二人がもう高めあいまくった映画の質だとおもいますね。菅原文太は全然主演でもなんでもないので、ちょっとがっかりしましたが、そんな事はどうでも良くなるくらい二人が良かった。

ちょっとストーリー的に好みではなかったのですが今回も傑作でしたね。

しかし、今回も人殺しすぎですね。広島怖ぇよ。イイ時代に産まれたなぁオレ。

 

点数:87点

(59)仁義なき戦い

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出典:仁義なき戦い : 場面カット - 映画.com

 

仁義なき戦い

この前に取り上げた映画「この世界の片隅に」がとてもすばらしかったので、この時代の広島県呉市ってどういう状況だったのだろうかと興味が湧き、この映画にたどり着きました。「この世界の片隅に」が昭和21年までの呉市が舞台で、「仁義なき戦い」が昭和21年の広島県呉市闇市から始まるお話し。前から観たい観たいと思っていたが、なかなか機会がなく、今しかないというタイミング。「この世界の片隅に」を観た後に観なくていつ観る!

 

deki-sumeshi.hatenadiary.jp

いやはや、すごい映画でした。

この手のヤクザ抗争映画はあまり観たことがなかったのですが、入り組む人間関係に抗争の図が複雑すぎて鑑賞後も解説サイトで確認をしたくらい。

この映画のすごいところは、実際にあった抗争がもとになって、ほぼ実話ベースで作られているということ。それを知りながら観ると、広島県めちゃくちゃ怖ぇよ!手汗がすごかったです。セリフもリアリティ重視の深作欣二演出なのか、聞き取れない部分も多かったが、それが逆に戦後の混乱や乱暴なヤクザものを描いているようで、むしろそれが良かった。ケンカシーンのやたらにぶれるカメラなんかもものすごくドキュメンタリーチック。やはり、原爆が投下されるって何もかもが普通ではなくなるなと再認識しましたね。

そしてなにより、演者がみなすばらしい。全員そのまま。すぐに人撃ちそうやし、裏切りそう。親分とその女将も二人ともやらしい感じが最高。だれもが知ってる菅原文太大先生が演じる広能のかっこよさは、この後続く続編でどんどん磨かれていきますが、この1作目でも充分感じられます。

もう、めちゃくちゃな時代ですよ。

それが知れただけでも素晴らしい映画ですし、傑作ですね。

 

「まだ弾ぁ残っとるんじゃけぇのぉ」

 

点数:88点

(58)この世界の片隅に

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出典:この世界の片隅に : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.com

 

この世界の片隅に

大相撲の稀勢の里に一喜一憂して、逃げ恥のガッキーでキュンキュンして、うまい飯をいかに安く失敗しないように食べログとにらめっこして、当たり前のように生活できる幸せを、改めて実感できる本当にめちゃくちゃいい映画です。


昭和19年、広島・呉市に嫁いだすずの日常を描いた物語。もちろん戦時中のお話。しかし、これは戦争映画というより、主人公のすずが生きていた時代に、「たまたま」戦争があっただけ。そこに巻き込まれたすず視点での日常。

当たり前の日常に入り込んでくる非日常。当たり前ってなんだ。よかったねってなんだ。何がいったい普通で普通じゃないのか。いや、日常ってなんなんだ。

この世界の片隅ですずは好きな絵を描いて幸せに生きていたかっただけ。

つくづく物語は視点で左右されると感じた。呉に嫁いだすずさんの視点。

ちなみに、この話に続くかのように、昭和21年の広島・呉を舞台にした映画といえば「仁義なき戦い」。すずが楽しんだ闇市に、広能こと菅原文太がいたとおもうと、また味があっておもしろい。

このすずがまた間抜けな女の子なんですが、のん(能年玲奈)の声がこれまたはまり役で素晴らしいんですよ。

上映館数少ないんですが、ぜひぜひぜひぜひ観てほしい映画ですね。

 

点数:95点!!!

(57)ミュージアム

 

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出典:ミュージアム : フォトギャラリー 画像(6) - 映画.com

 

ミュージアム

※ネタバレありです※

 

映像の質感は好きでした。雨のシーンがじっとりとしていていい。

それと小栗旬がやはりベリーグッド。妻夫木くんの強そうな感じもまたいい。一時的にパンプアップさせてたと思われる上半身のゴツさがあった。

ただ、肝心の猟奇殺人やその周辺の描写がもひとつ弱い。もっとエグさというか、怖さがあっても良かったし。

話の枠組みは、もろに映画「セブン」

原作の漫画に忠実なのか、その設定いるかな?という部分が多々見られた。カエル男と女医が双子?兄弟?やったり(漫画MONSTERの丸パクリ描写)、小栗旬のお父さんが大森南朋で通り魔に刺されて死んでたり(助けられた親子が挨拶に来るシーンは本当に不要)。小栗旬の人物像を明確にするためだったとしても、いらんと思うなぁ。

そんなところを削って、もっと映画をシュリンクさせた方が骨太になったような。

でも、人集められるキャストでこの映画を作る気概は素晴らしいですね。

もっと絶望的なエンディングの方が好みでした。

 

点数:80点

(56)マイ・インターン

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出典:マイ・インターン : フォトギャラリー 画像(6) - 映画.com

 

マイ・インターン

若手女社長にシニアインターンで入った老紳士がアドバイスしてあげるという、なんてことのない映画ではあるんですが、めちゃくちゃいい映画です。
何がそうさせてるかって、アン・ハサウェイロバート・デ・ニーロ。この二人が醸し出すそれっぽい雰囲気がもうすばらしい。もちろん脚本もいいんですけど、演者である二人、特にロバート・デ・ニーロの役者の最高峰といえる姿。味がありますよねぇ。うまい。
立ち振る舞い、話し方、服の着こなし、驚き方、全てがその人の人となりを表現している。
アン・ハサウェイのちょっと気性が荒そうな顔つきもいい。
仕事に対する考え方なんかもちょっと参考になる、ほんといい映画です。
アン・ハサウェイもすばらしいんですが、ロバート・デ・ニーロが最高な映画!

 

点数:88点

(55)ケンとカズ

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出典:ケンとカズ : フォトギャラリー 画像 - 映画.com

 

ケンとカズ

Twitterでフォローしてる水道橋博士がやたらと絶賛されてて、宇多丸師匠のウィークエンドシャッフルでも以前候補に入っていたので気になっていた作品。最近知り合った、おもしろい友人がめちゃくちゃ気になってる作品と言っていたので、公開終了前に観ておこうと思って下北沢トリウッドに滑り込みで観に行ってきました。

ドラッグの売り子として、ヤクザに使われながら生活するケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克也)の青春?映画。

結論から言いますと、この映画はすごい。主演二人でしっかりと映画を形成していて、そこの土台がかなりしっかりしている。登場人物は極端に少ないです。ただそれが良い。二人の心情に集中でき、揺れ動く二人の考え方まで脳内に入り込んでくるようで、観ている側までプレッシャーがかかる。手汗びちゃびちゃでした。

映画の質量はもちろん、重いです。とある方が「この映画で描かれている世界が地続きの現実とは思えないから、この映画はダメでした」という評論をされていたのですが、私は真逆でした。知り合いで元ヤクザ屋さんがいて、ホントかウソかわからない怖い話をよく聞いたので、「この世界はすぐそこにあるのかも」と感じながら観れてしまったので、余計に怖かった。フィクションであることはもちろんわかっていますが、映画の中での葛藤、人間関係、世界観含め、等身大のリアルが描かれていた気がする。そんなきつくて悲しい話を映画として成り立たせる監督の手腕に脱帽です。てか、監督の小路紘史さん1986年生まれって年下かよ!すげぇな。説明を入れず、画やセリフでわからせる監督の脚本・手法も素晴らしかったですが、無名の演者の方々も素晴らしかった。

ケンは目力と存在感が良かった。あと演技力がレベルアップすればいい役者になりそう。カズはめちゃくちゃやりそうやけど、0.1%くらい感じられる優しさの絶妙さが完璧で、いい目してました。藤堂役の高野春樹さんも、笑顔と怖い顔のギャップが最高で、子分の田上役の江原大介さんは怖い雰囲気が100点。簡単に人殺しそうな目。アホそうな、テルの藤原季節も良かった。

本当に誰も救われない映画でしたが、日本映画の未来は救われたと思えるような映画でした。こんな才能が日本にはいるのか、日本映画の今後が楽しみで仕方ないとおもえる傑作でした。重い映画好きには大推薦できます。

この監督の次作が気になる。

 

点数:90点

(54)いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

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出典:いきなり先生になったボクが彼女に恋をした : フォトギャラリー 画像(11) - 映画.com

 

いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

知り合いが関わっていたので、普通だとまず選ばない映画なのですが、観に行ってきました。

その知り合いにはものすごく申し訳ないのですが、、、これはきつかった。

 

以下ネタバレになる部分と、この映画が好きな人は不快に感じる点があると思うので、読まないでください。

 

 

 

もうね、、、、脚本がどうしようもなくひどい。

日本的な感情の描き方や、表現の部分がなくてほんと何これって感じになるので、怖い。こんなこと日本ではないし、そう考える日本人はいないよと思うシーンが多々ある。

もう冒頭からこの映画あかんわと思ってしまった。

企画・原案・脚本:Kevin DC Chang ということからも、韓国サイドからの企画で立ち上がっているように感じられます。何回も言いますけど、映画の中の日本人の日本人らしさが全然感じられない。

さらに、この「いきなり先生」製作委員会にエイベックスががっつり入っており、

製作:松竹/エイベックス・ヴァンガード/エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ/エイベックス・ミュージック・パブリッシング/エイベックス・ピクチャーズ

参照:映画『いきなり先生になったボクが彼女に恋をした』公式サイト

おそらく、それが最悪な方向に働いているのだと思う。

イェソン(SUPER JUNIOR)をもっと出してくれ。ここのイェソンはそうじゃなくて、こっちの方向でとか。唐突すぎる訳のわからんシーンが多すぎた。

音楽も酷い。音楽というか効果音含めて、ほんとうにひどい。

たぶん、脚本との相性が悪すぎる。

音楽は、釣りバカシリーズをやられている、信田かずおさんという方だそうですが、おそらくこの方は日本人が作った日本的な昔ながらのドタバタコメディー映画なら手腕を発揮される方だとおもう。バネが伸びる音の効果音とか、もうやめてくれよとか思ったんですけど、一定数好きな人もいるでしょう。しかし、この映画は、原案の方がKevin DC Changという韓国の方なので、前述したように脚本が全然日本的でない。

それが一番最悪に働いていたシーンというか、一番恐怖を感じたのシーンがあった。佐々木希演じるさくらが韓国からビジネス目的で来た社長に気に入られて、ホテルの1室で襲われるシーン。はっきりいってこのシーンの演出と音楽の組み合わせには、背筋が凍りついた。

佐々木希を騙して自分の部屋へ連れ込む。嫌がる佐々木希を子を襲おうと、ホテルの広いスイートルーム内を追いかけ回る終始笑顔の韓国人社長(めちゃくちゃ男前)。まじで、本気で嫌がる佐々木希と笑顔で悪気がない様子で追いかける男前。この描き方が本当に怖かった。これ狂人ですよ。おそらくこのシーンを見た多くの人が、高畑裕太のホテル事件を思い浮かべると思う。示談済ませたのに、あれは合意ですよとか後から言いそうな雰囲気。そのシーンを平気で入れる表現は、全く日本的でないし、おかしい。韓国の方の男前のごり押しと発案だと思いますが。そして、それを最大限ポップにしようと狙っているのか、釣りバカの家庭シーン的なドタバタ追いかけ回るような音楽が永遠とバックで流れる。怖くて仕方なかった。もしそれが、恐怖を際立たせる狙いならすごい。黒澤明対位法ですよ。映像と音楽を全く逆で描く。そんな狙い1mmもないと思いますが。あのシーンで正直笑える人なんていないでしょう、このご時世。マジであれはほんとにダメだと思う。ほんとひどい。

 

この映画の救いは、主演のイェソンと佐々木希が美男美女だという点。

 

正直、脚本で変な流れは作る必要なくて、イェソンが佐々木希に韓国語を学ぶシーンをもっともっともっと丁寧に魅せるだけでめっちゃくちゃ良くなる映画だと思う。

1つ修正案としての例ですが、、、

イェソンは先生をしたことがないから、普通の先生が教えないような特殊な日常会話例を佐々木希に教えてしまう。「借金取りに追いかけられている韓国人に道を聞かれたら、「こっちは行き止まりだからあのゴミ箱の中に隠れればいい」と言ってあげてください」みたいなフレーズを教えたり。絶対に使う事なんて無いだろうと佐々木希が思っていたら、街中でまったく同じ境遇で逃げている韓国人に出会い、使う羽目になる。「使った・・・・」と呆然とする佐々木希。こんな吉本新喜劇的なべったべたな内容で良かったと思う。

この流れなら、どんどん案もでます。文化の違いからイェソンとケンカしちゃったりするけど、そのケンカのワードも授業で習ったフレーズで、めちゃくちゃ汚い言葉だったりして韓国語でやりとりしているのに、ケンカも面白い。韓国語での恋愛のやりとりも冒頭に教えちゃったりして「使う事なんて無いですよ~」とか言うけど、ラストシーンで使っちゃって「使うことになりましたね」みたいな。こんなべたべたでいいんですよ。あの美男美女がいたら。

 

なんで、あんな訳のわからん脚本にするかなぁ。

佐々木希が韓国語を学ばないとイケない動機も弱すぎるし、訳のわからん韓国からの社長とか不要。ムダに男前やし、意味が無い。あの社長は気持ち悪い方がいい。それならホテルのシーンも笑えた。帰ってくる元旦那の必要性もゼロ。さらに言えば、冒頭のイェソンが沖縄に行く理由と滞在する理由もあり得ない。

ドタバタコメディーやるなら、実際にありそうな部分はちゃんと筋通して、その中でふざけないと。

あと、絶対にいらないのは巻き戻しの演出。ホントに不要。

佐々木希が可愛い。ただ、それだけです。

 

点数:23点