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(87)洗骨/笑って泣ける大傑作!


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出典:https://eiga.com/movie/88744/photo/

たまにこんな映画との出会いがある。

映画を見終わったあとも、思い出すと涙が出てくる映画。

これは名作ですよ。ほんとに、とても「いい映画」。

 

舞台は沖縄の粟国島。今も島に残る洗骨とは、風葬し、数年後に骨になった遺骨を取りだしてきて洗うという風習。その「洗骨」にまつわる、笑いあり涙ありのヒューマンドラマ。

脚本・監督は照屋年之さん。

これが、まさかの、ガレッジセール ゴリさんの本名。本人の出演は全くなし。

正直、唸りました。めちゃくちゃうまい。

パンフレットを読むと、よしもとが映画に力を入れだしたタイミングで短編監督デビュー。評判が良かったそうで、短編を複数作ったあと、長編も1作作ったが、これが相当評判悪かったらしい。ただ諦めきれず、映画作りにハマって、自主制作でも短編を作ったりされていたそう。この映画は長編2作目。積み重ねの結晶なのかもしれません。

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出典:https://eiga.com/movie/88744/gallery/4/

気になるところもいくつかあったけど、そんなことはどうでもよくなるくらい、全体のバランスがいい。邦画にありがちな無駄な説明セリフもないし、そのセリフ遊びが心地よい。芸人のセンスが光っている。映画の空気が悪くなるシリアスなシーンにも、遊びセリフを入れていて、良い弛緩剤になっている。なんというかちょっとだけ日常のやりとりから外したセリフで笑いを取るところ。いやらしすぎなくて、日常にもありそうな範囲にとどめている。この絶妙なやりとりは、あんまり日本のドラマや映画では見られないようにおもう。脚本のセンスは相当。映画に優しい雰囲気を醸し出している大きな要因のひとつ。

それ以外にも、沖縄の風景を挟み込む間や、無音になるような演出の間なんかも素晴らしい。おいおい、どうしたこれ?とほんと動揺するくらい絶妙だった。河瀬直美監督の奈良の自然ドヤって感じに近いけど、それよりもなんか柔らかい。ちょっと長いかな~と思うようなところも、なんかそれのせいで涙が出てくるような。環境音のみのシーンや、セリフ無しシーンでも、何度も泣いてしまった。

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出典:https://eiga.com/movie/88744/gallery/2/

私は今33才なのだが、若い頃から大事な人を亡くした過去が、悲しいかな、けっこうある。19の時に親友を病気で亡くした過去が一番辛く、正直、数年は思い出すだけで夜に泣いたりしていた。それもあって、人の生き死にについて考えた量は、同世代の人よりも間違いなく多いと思っている。海外に行くとその国の死生観を調べたり、宗教施設にいったり、本も沢山読んだ。だから、死生観を軽く扱っているような映画を観ると腹が立ってしょうがない。余命残りわずかとかを売りにした恋愛映画は、人の死を涙に利用しているだけで、マジでくそ食らえだと思っているが、見たらやはり泣いてしまう。でも嫌い。

この映画は、それを踏まえても、扱い方が丁寧ですばらしかった。

生と死の対比にとどまらず、風葬前と洗骨前という対比まで描いていたし、とても大事に描いていた。

正直、洗骨というこの儀式も羨ましいと思った。仏教だと、四十九日での納骨がスタンダードでその後の法事が一周忌、三回忌、七回忌でしょうか。この映画での洗骨は、納棺から4年後。また会えるという表現をしていたが、死者の骨を洗うという、仏教のそれよりも圧倒的に死者への関わり方が濃密で、長い。自然信仰で自然とともにある風土と、祖先を大事にする沖縄だからこそ残っているのかも。

画としては、ちょっと異様で気持ち悪いものになるかもしれなかったのに、あの美しい風景がうまく中和していた。

死を受け入れ、生を受け入れる。

命の大切さを感じ取れる映画。

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出典:https://eiga.com/movie/88744/gallery/

俳優も奥田瑛二がどうしようもない役で、らしくない役をされていて、筒井道隆の静かに怒る姿、水崎綾女のちょっと馬鹿そうな女の子感、そして特筆すべきは大島容子の圧倒的なまとめ力。皆さんとても良かった。監督のキャスティングのこだわりも書いてあったが、芯もあるし演出力があるんだろう。

ただ、このメンツだと日本でのプロモーションは弱いなぁ。作品力は強いから、口コミしかない。配給のファントムフィルムも弱いし、予算もないんやろうなぁ。と、一人でも多くの人に見て欲しくなって、久々に感想書いてるんですけどね。

ちょっとラストからのエンドロールと主題歌で、感動のあまり立てなかった。死生観を描いた映画の中では、トップクラスにいい映画。

マジで、劇場探してでも観てください。

 

点数:95