このタトゥーだらけのかっこいい8人「BAD HOP」をご存知だろうか。23歳のHIP HOP クルーである。神奈川県川崎市が生んだ、見た目どおりほとんどが元ワル(更生済み)。そんな、彼らが自らの手で武道館でワンマンを開催。ちょっと経ってしまったんですけど、今日はそれについて書こうかと。
※上記写真撮影のcherry chill will氏の写真は本当にかっこ良い
武道館には、夫婦で参戦してまいりました。間違いなく歴史に残るライブになるだろうと。古い話でいうと、ビートルズの来日公演を武道館で見たテリー伊藤が、いつまでもテレビで自慢するかのように。そんな日本の音楽シーンにおける重要なライブになるという予感がしたんですよね。夫婦ともにそんな思いがありました。
事務所に所属せず、後ろ盾もない23歳の8人が、武道館のステージの上に立ってラップをする。とんでもないことですよ。一部、少年院に入っていた経験もある彼らが。知る限りでは、媒体を使った宣伝をほとんど行っていない。SNSとライブでの発表のみだろう。10代~20代中心のファン層なので、それで充分クチコミが広がり、ニュースにもなる。チケットサービスもシステムだけ借りて、大手はほとんど使わず。それが即日完売。誰が想像出来たでしょうか。高校生RAP選手権の紹介VTRで、悪さ自慢をしていた彼らから。
で当日なのですが、、、もう、間違いなく、歴史に残るライブでした。
とんでもなくかっこよかったっす。最高という言葉は、こんな日に使うものかと思わせるくらい最高でした。
ちょっとBAD HOPとの出会いについても。
あれは、スカパーのBAZOOKA企画「高校生RAP選手権」第一回目の決勝ですかね。後の、T-Pablow(BAD HOP)ことK-九(ケーナイン)とLIL-MANのバトルからでしょうか。
当時、水道橋博士か大根仁監督あたりがTwitterで面白いとつぶやいていて(記憶が違わなければ)、気になって、観たのを覚えてます。
このときの決勝は、間違いなく日本のフリースタイルバトルブームを生み出す、起爆剤になったと思います。大会は8人参加のトーナメント。今と比べると少ない高校生ラッパー達が、HIP HOPの流儀に逆らうことなく、お互いをディスり合うフリースタイルバトルでスキルを競い合ってました。正直、決勝までそこまで面白くはなかったんですよね。
ただ、決勝だけは違いました。
決勝に勝ち上がった2人は、HIP HOPで日本をのし上がろうと語り、このフリースタイルバトルの無意味さをビートに乗せた。「オレらで回そうぜラップでこの国の経済」「オレがやってやるよ オレがNo.1 HIP HOPドリーム」「そうそう同じ言葉 こんな戦いしても意味がない」「勝ち負け幸あれとか関係ない」「同じこと思ってHIP HOP」。
初見の時、感動のあまり、泣きました。高校生ラッパーすげーよ。審査員のZeebraとDABOがバトルの後、立ち上がったんですよね。そう、このおじさんラッパーたちもそう思ってた。ラップでこの国の経済回したかったんすよ。
そのパンチラインを生み出したT-Pablowが7年後、川崎の幼馴染たちと組んだクルーBAD HOPとして、武道館に、それもワンマンで、立ったんです。
グッズに群がるティーンや20代。地方から来てる様子のファンも多かったです。日本の経済が回ってますよ。ヤングが金出してるのに、30代の我々が観に行かないわけないでしょってことです。Tシャツも買いましたよ。笑
その後、高校生RAP選手権はすっかり人気企画となり、T-Pablowは4回目も優勝。双子の弟のYZERRも5回目で優勝。
ここで、BAD HOPのブレインといえるYZERRについても。当時の年齢にして、高校生RAP選手権という人気コンテンツを、見事にプロモーションの場として捉えていたってのも驚きです。それが、4回目のT-Pablowのスタイリングに関するエピソードが白眉かと。
普通の服を着て大会に出ようとしたT-Pablowに、40万のブランドの服を着させて出場させたそうです(インタビュー談)。後の数億円になる可能性があると踏んでの出費だったようで、もちろんネット界隈で話題になったのを覚えています。印象に残るシャツで大きくマリアかキリストが描かれている服でね。「パブロの服の値段調べたらヤベェ」とかね。
BAD HOPの成功はこの頃から、決まっていたのかもしれないですね。
ほかにも、フリースタイルダンジョン、2WINでのデビュー、VICEドキュメンタリーなどなど、ここまでBAD HOPがくるまで語りつくせないストーリーは多々あります。
ただ、2WINの音源や、初期BAD HOPの音源は正直キツイなと感じてました。フリースタイルはカッコいいのに音源がイマイチ。典型的な売れないHIP HOP路線に落ちたかと思ってました。
が、、、2017年のアルバム”Mobb Life”ですね。大化け。完全にハマりました。
全曲楽曲がめちゃくちゃ良い。悪ぶるだけでなく、Hip hopの良さをしっかり出して、女性やブランド、クルマなどについても曲にしていて聞いていても非常に楽しい。Mobb Lifeの「オレら仲間たちと稼ぐMoney」っていうラインもそうですが、リリックがかなりわかりすくおもしろい。トラップやキャッチーなビートに合わせる彼らのスタイルは、マジで化けた瞬間だと。さらにセルフプロデュースってのがホントにすごい。めちゃくちゃ世界のHip hop勉強してるんやと思いました。
BAD HOP / Ocean View feat. YZERR, Yellow Pato, Bark & T-Pablow (Official Video)
同時期にインターネットラジオWREPでのBAD HOPの番組内でのトーク「リバトーク」が面白すぎると話題になる始末。しょうもない芸人のラジオよりも全然面白い。少年院ネタから好きなお菓子までなんでも笑いに昇華させるYZERRのMC力です。人間性が見えるラジオのプロモーションって結構強いんですよね。
そして、さらにさらに、、
今年リリースされたアルバムBAD HOP HOUSEですよね。全員参加した初めての曲 Kawasaki Driftをフックに、またかましてきました。こやつらもはや無敵ですよ。
BAD HOP / Kawasaki Drift (Official Video)
で、Zepp Tokyoでのオシャレなワンマン。(中略)
で、武道館。成功者には実力と運と判断力が必要とよく言われますが、彼らにはそれが伴ってますね。空きがない武道館が1日空いたって連絡がくる運。ワンマン決めちゃう判断力。そして、間違いない、音源の強さ。
リバトークで、武道館のステージ造設に5000万円かかったとYZERR が話してましたが、そんなことまで赤裸々に話す彼らに業界のタブーなんて通用しないのもおもしろい。
と、前振りが異常に長くなりましたが、彼らのステージングは素晴らしかったです。
コールアンドレスポンスが明確やから、マジで海外のライブばりに観客が声出してました。
あんな楽しいライブ久々でした。
時折、ビートがずれてたような違和感と、「これ以外」の映像がちょい遅れやったのはご愛嬌でしょうか。
チケットについてくるDVDとCDとかもう、意味わからんくらいサービスがすごかったし。
ライブレポはこの辺が詳しいですね。
まじで、点数は5億点でした。
彼らの今後の動きが気になりすぎる。