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刺身とか映画とかあれとかそれ

(82)ビジランテ/地方で生きるということ


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出典:ビジランテ : フォトギャラリー 画像 - 映画.com

 

ビジランテ

ちょっとネタバレ入ってるかもなのでお気をつけて読んでください。

入江悠監督によるオリジナル脚本作品。大森南朋鈴木浩介桐谷健太の主演で、入江監督の地元である埼玉県深谷を舞台に地方都市特有の暗部を描いていく。

ビジランテ : 作品情報 - 映画.com

 

この作品の中には、日本の地方に漂う独特な嫌な空気感が嫌というほど、溢れてる。

やたら殴るオヤジ。ショッピングモール。相続。市議会レベルでのしょうもない出世争い。それに命をかけてる馬鹿。工場で働く低賃金労働者の中国人コミュニティ。それを理解できない自警団。自警団のださいユニフォーム。デリヘル。偉ぶるチンピラ。路面店焼肉屋。ショッピングモール。くそじじい。くそじじい。くそじじい。全員が全員視野が狭い。マジで狭い。小さい。埼玉の町で偉ぶることのくだらなさ。この小さいようで大きいコミュニティは日本中に溢れてる。

この映画で象徴的な川のシーン。少年時代に渡ったのは、長男の一郎のみ。その一郎だけが町を抜け出して、生活を送っていた。「川」はそんな小さなコミュニティと外界の境界線のように描かれていたのかもしれない。くそやろうではあるが、町のチンピラに怯えず、土地を守ることを決めたのも一男。この町の争いの規模に、くだらなさを感じていたのかもしれない。このしがらみで三兄弟が争うのも川の中。大人になって三郎も川を渡り、そこから行動に変化が現れる。渡らなかった二郎はそのコミュニティーでの成功を目指す。町の中でしか描かれないこの映画のロケーションも、コミュニティーの小ささをあざ笑うかのよう。僕も田舎から出てきたタイプなので、残っているやつと出たやつの違いってのが結構身に染みましたね。

たまたま一人で観に行ったので、嫁にどういう映画だったのか説明しずらいくらい、なんて言えばいいのか咀嚼がいる映画。でも、観てよかった。

映画としては、結構バイオレンスで、エロも田舎っぽくていいし、入江監督っぽい長いカットや、音のどきっとさせる演出など、非常に面白かった。地方のくだらないしがらみの中で争う、視野が狭い大人たちの嫌な世界を、入江監督は、めちゃリアルに描くこともできたと思うけど、そこをあえてフィクションの色を付けて描いて、映画としても面白くみれるよう地方というコンテンツを脚色してる。

俳優は、桐谷健太がめちゃくちゃいい。主役は3人だと思いますが、桐谷健太の映画といっていいと思います。ライトでポップな桐谷健太をここまでハードに使えるか。桐谷健太ファンになりました。大森南朋の不気味でなにやらかすかわからない感じとか、鈴木浩介の真面目っぽさもほんとよくて、この三人がまた絶妙にミスマッチ。この画面上のミスマッチ感が生き別れた兄弟感を演出しててそれだけで最高でした。般若でてきたのは驚きましたが、いい雰囲気出してた。篠田麻里子はなんともですが。

途中の一郎のニットがくそダサくて笑った。

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 大森南朋の芸の幅の広さよ。

とりあえず、桐谷健太がすごい映画でした。

画面からも寒さが伝わってきて、いろんな人がみたらいいなと。

 

点数:90点