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(74)沈黙 サイレンス/名作です。信仰とはなにか。何を守るべきなのか。


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出典:沈黙 サイレンス : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.com

 

沈黙 サイレンス

(ネタバレあります)

私、宗教の話が大好物でして。といっても、私自身は無宗教(お葬式はもちろん仏教だろうし、神社も参りますし)。十代の時に行ったインドで、信仰に厚い人達や、その人達が取る行動、環境、文化がもすごく衝撃的で、それから「宗教」に興味を持ち出しましたねぇ。日本人の中には、ぼんやりとしか存在してへんように感じる宗教。国内の寺社仏閣はものすごく多いですし、そんな宗教施設が今でも昔の形のママ残ってる姿は、色んな方々のお布施だったり賽銭だったりで。やはり日本人も何かにすがりたいんでしょうし。そんな、ぼんやりとしか日本人の頭にないテーマを描ききった本作。

最高の映画でしたよ。

マーティン・スコセッシ監督はすばらしいです。さすが。構想28年かけてよく作ってくれました。ほんとにありがとうございます。しっかり映画としておもしろいし、3時間近い上映時間も全く退屈することなく見ることができた。いい映画観たなぁ〜と。

とりあえず、映画全体がすばらしいんですが、俳優さんがまず良いので。

 

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出典:沈黙 サイレンス : フォトギャラリー 画像(2) - 映画.com

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出典:沈黙 サイレンス : フォトギャラリー 画像(6) - 映画.com

 

宣教師役のアンドリュー・ガーフィールドの葛藤に苦しむ姿、棄教したリーアム・ニーソンの気まずそうな語り。日本人俳優勢の、一方的すぎない演技。皆さん最高のパフォーマンスを見せてくれて、ほんと素晴らしかった。

イッセー尾形演じる井上筑後守が棄教したロドリゴに「Welcome」と初めて言うシーンなんて「うまい!」と思いましたよね。間が絶妙。

あと、窪塚洋介演じるキチジローも調子よくいらつかせる感じがいいんですよね。キリスト教から離れたように見せかけて、すぐに信仰心を出して近より、また棄てたように見せる。人間性が憎めない。大好きなブログの三角締めさんがうまいことゆうてはったんで、引用します。

最初は、裏切っては赦しを求めるキチジローにイラッとしたんですが、最終的には「人と宗教の距離感はこのぐらいで良いんじゃないか」と考えさせられるようになって。

参照:沈黙 サイレンス(ネタバレ)|三角絞めでつかまえて

そう、実は宗教観ってキチジローくらいの距離でいいんではないかと。

「信仰とはなんなのか。何を守るべきなのか。そこまでして守る信仰とはいったいなんのためなのか。誰のため?自分のため?信じたキリスト教のため?」この映画でロドリゴが悩むテーマでもあり、この映画を観ている者にも語りかけているテーマやないかと。

ロドリゴにとっては、キリスト教を棄てることって、それまで信仰していた人生を否定(=今まで生きてきた自分を否定)することとイコールになってしまう。それが一番嫌だったのかも知れませんね。深い信仰心にあるひとつの怖さですよね。

宗教は、好きなときにすがれる存在でいいのではないかと、日本人的見解。

そうそう、日本の描かれ方も非常に良かったです。棄教という行為の上で、やってることはめちゃくちゃですが、日本という独特の文化を持つ国がなぜ他国に影響されすぎず、ほどよく保たれていたのか。日本独自の精神性・文化の理由も描かれていたようにも感じました。

日本におけるキリスト教の宣教と、貿易によって得られた利益、鎖国による海外文化の善し悪しなど、日本での他国とのバランス間がどこで崩れていったかなど、勉強するとおもしろそうやなぁ。

なにはともあれ、音楽も自然音のみで(聞こえない程度に音楽流れているそうですが)本当に静かで、どっぷり入り込める作品だったかと思います。

宗教話は日本では三大タブー話題の一つなので、そうそう語り合える話でもないので、こういう作品がメジャーとして出てくることに喜びと敬意を表したいです。

この作品を書き上げた遠藤周作としっかり映画化したマーティン・スコセッシ監督にリスペクトを送ります。

 

点数:93点

 

 

沈黙 (新潮文庫)

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