炙るあざとさ 炙らない正直さ

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(55)ケンとカズ


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出典:ケンとカズ : フォトギャラリー 画像 - 映画.com

 

ケンとカズ

Twitterでフォローしてる水道橋博士がやたらと絶賛されてて、宇多丸師匠のウィークエンドシャッフルでも以前候補に入っていたので気になっていた作品。最近知り合った、おもしろい友人がめちゃくちゃ気になってる作品と言っていたので、公開終了前に観ておこうと思って下北沢トリウッドに滑り込みで観に行ってきました。

ドラッグの売り子として、ヤクザに使われながら生活するケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克也)の青春?映画。

結論から言いますと、この映画はすごい。主演二人でしっかりと映画を形成していて、そこの土台がかなりしっかりしている。登場人物は極端に少ないです。ただそれが良い。二人の心情に集中でき、揺れ動く二人の考え方まで脳内に入り込んでくるようで、観ている側までプレッシャーがかかる。手汗びちゃびちゃでした。

映画の質量はもちろん、重いです。とある方が「この映画で描かれている世界が地続きの現実とは思えないから、この映画はダメでした」という評論をされていたのですが、私は真逆でした。知り合いで元ヤクザ屋さんがいて、ホントかウソかわからない怖い話をよく聞いたので、「この世界はすぐそこにあるのかも」と感じながら観れてしまったので、余計に怖かった。フィクションであることはもちろんわかっていますが、映画の中での葛藤、人間関係、世界観含め、等身大のリアルが描かれていた気がする。そんなきつくて悲しい話を映画として成り立たせる監督の手腕に脱帽です。てか、監督の小路紘史さん1986年生まれって年下かよ!すげぇな。説明を入れず、画やセリフでわからせる監督の脚本・手法も素晴らしかったですが、無名の演者の方々も素晴らしかった。

ケンは目力と存在感が良かった。あと演技力がレベルアップすればいい役者になりそう。カズはめちゃくちゃやりそうやけど、0.1%くらい感じられる優しさの絶妙さが完璧で、いい目してました。藤堂役の高野春樹さんも、笑顔と怖い顔のギャップが最高で、子分の田上役の江原大介さんは怖い雰囲気が100点。簡単に人殺しそうな目。アホそうな、テルの藤原季節も良かった。

本当に誰も救われない映画でしたが、日本映画の未来は救われたと思えるような映画でした。こんな才能が日本にはいるのか、日本映画の今後が楽しみで仕方ないとおもえる傑作でした。重い映画好きには大推薦できます。

この監督の次作が気になる。

 

点数:90点